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 釈尊の時代はマガダ国が大きな勢力をもっていましたが、ナンダ王朝の時にマケドニア王のアレキサンダー大王がギリシャを支配し、シリア、エジプトを征服し、インドまで侵攻してきました。しかし、アレキサンダー大王はインドを征服するまえの紀元前三二三年に亡くなりましたので、今度は逆にマガダ国のチャンドラグプタによりインドのギリシャ領は征服されてしまいます。

 チャンドラグプタはインド亜大陸を統一してマウリア王朝をたて王位につきました。さらにデカン高原の全域、南インド半島までを領土として歴史上初のインド全域を支配するマウリア帝国が実現されました。そのマウリア帝国の王チャンドラグプタの孫がアショーカ王です。

 アショーカ王は性質狂暴で長兄や兄弟をことごとく殺害して紀元前二七〇年に王位につきました。そんな人物ですから領土欲・支配欲はつよく、対外積極策をとり、さらに領土を拡大しようとしましたが、紀元前二六一年に東部のカリンガとの間で戦争を起こしました。この戦争は悲惨を極め、多くの人命を奪ってしまい、戦後アショーカ王は戦争の悲痛に深く心を痛め、二度と戦争はしないと誓ったといわれています。

 アショーカ王は仏教に帰依し、熱心に仏道修行をし釈尊の教えと慈悲を規準とした法による支配により武断政治を転換したのです。四姓制度を公的に認めず、人材登用し各地に施療院を設け、薬草を栽培したり、街路樹を植え、井戸を掘らせるなどの福祉事業もおこします。特にインドの各地に仏塔八万四千を建立して釈尊の遺骨を分骨して納め、聖地への巡礼を企てて世界中に仏教を布教することに余生をささげたということです。

 伝道師たちはインド全土のみならず西アジアからアフリカ、ヨーロッパの各国の布教にその生涯をささげました。アショーカ王の息子と娘はセイロン(スリランカ)に派遣されています。またこの頃より誕生の地ルンビニー、成道の地ブッダガヤー、初転法輪の地サールナート、涅槃の地クシナガラや、法華経が説かれた霊鷲山のあるラージャグリハ(王舎城)、祇園精舎のあるシュラーヴァスティー(舎衛城)などの中インド中心の霊場参拝もさかんになりましたが全インド各地に建立された仏塔はより多くの人に崇拝され、釈尊の教えを信仰する人びとも急増しました。

 この仏塔を守った在家信者の人たちは釈尊の一代記を語り、仏塔には神格化された仏伝を描いたレリーフが刻まれるようになりました。

 インドでは「輪廻転生」という何度でも生まれかわるということが信じられていましたが、釈尊もまたこの世に出現されるまで前の世があり「菩薩」として仏道修行をつまれていたのです。その仏道修行は「六波羅密」で布施、持戒、忍辱、精進、禅定、智慧の完成を目標とするものでありました。このようにアショーカ王の仏教保護政策により仏教は全世界へ広まっていきますが、同時に釈尊の偉大さも超人化されるようになりました。

 紀元前三世紀ごろに釈尊の前世物語がジャータカ物語として成立し南方に伝わっていき上座部のお経として収められ世界各地に伝えられていきました。イソップ物語とかアラビアンナイトにもこの説話があり、日本でも今昔物語や宇治拾遺物語などにもでてくる説話です。仏教信仰はこのようにアショーカ王の仏塔建立により全インドに広がり、発展していきます。当時のインドは経済発展期であり多くの王侯貴族や長者と呼ばれている大商人たちが仏教教団を外護し金品を布施しましたので僧院は豊かになり充実していました。苦からの解脱と中道を説く平和主義の仏教に帰依し社会の安定を祈る人が多くいたのです。

 しかし、出家者は僧院の中にいて「アビダルマ」とよばれている仏教理論の研究につとめ仏道修行よりも仏教の専門家として多くの部派に分裂して、教義中心の仏教を主張するようになり自己中心的で阿羅漢になることを目標として自己の悟りを求めるようになりました。

 釈尊が悟りを開かれてから入滅されるまでの一生は大衆の苦悩を救済することであり、ジャータカの主張も他のために自己の生命すら布施する菩薩の利他行でありました。すべての人とともに悟りを開き、苦しみから解脱するという「自利」のためには「他利」の修行なしでは完成しないとする「自利他利」こそ自分も仏になり他者も仏になってもらうとする菩薩行を理想とする仏教者が出現します。
 「上求菩提下化衆生」=自分の悟りを求め修行すると同時に、その悟りで衆生を教化しよう=とか、「一切衆生悉有仏性」=すべての人は仏になる可能性をもっている=という考え方を仏教の中心とする大乗仏教が出現したのです。この立場の仏教信者は部派仏教の人を声聞とか縁覚として他利の修行なしでは自利も得ることはできないと批判しました。



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